星野博美「転がる香港に苔は生えない」

転がる香港に苔は生えない (文春文庫)

  • 図書館活用。前々から興味があった作品を昨今の香港情勢で思い出したもの。飛ばし読みするには面白すぎ、貸し出し+延長を2回繰り返しジックリと読了。
  • 1997年の返還前後の2年間の、海外生活雑記であり、香港の市井の生活者との交流の記録というだけで部類に面白い。著者は1986年から香港に留学経験があり10年振りの再訪であるというところも作品の彫りを深くしている。
  • 大仰な分析や政治的メッセージを排したスケッチになっているところが好印象。初対面の豪国籍華僑に婚姻を迫る女性、カナダ移住(パスポート取得)という人生の選択を悔いる阿強など、強く印象に残る。
  • あれから23年、当時はなんとなくの予感でしかなかった中共への恐怖はガッチリと現実的な問題として目の前に現出しており、今こそこういったルポが読みたい。アヘン戦争まで遡る歴史の連続性も痛感。
  • 面白くかつ切ない良い作品だった。

「選択9月号」

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  • メモ
  • 米金融市場「バイデン相場」の始まり-コロナ不況下での危うい株高
  • 中東勢力図に新たな「分断線」-イスラエル=UAE「枢軸」のその先
  • 択捉島で進む「軍事要塞化」-安倍「対露交渉七年」の無残な結果
  • 米中「限定軍事衝突」はあり得る-南シナ海「人工島」攻撃が焦点に
  • 広告を裏読みする(21)「TikTok」新聞広告の思惑
  • 安倍の病状の本当のところ-再び政権「投げ出し」に至った経緯
  • 次は「菅」に絞られた-来年九月までの「短期リリーフ」政権
  • 政界スキャン(427)八十一歳幹事長が決する「安倍の次」
  • 総裁レースの「大穴」河野太郎-「もしや」が消えない事情
  • 米国不動産市場はまた崩壊するか-世界コロナ危機の新たな「震源
  • 検証「コロナ報道」-誤報と偏向で国民を惑わす大罪
  • 「農協改革」は元の木阿弥に-JA全中は「守旧派路線」へ回帰
  • NHK「前田会長」が大暴走中-公共放送を翻弄する「ど素人」の老害
  • 日本のサンクチュアリ(552)安倍最長政権-歴史的成果「ゼロ」で終わった理由

山際淳司「江夏の21球」「たった一人のオリンピック」

江夏の21球 (角川新書)  たった一人のオリンピック (角川新書)

 

  • 山際淳司が忘れられた作家になっていたとは驚きでしたが、こうして改めて読んでみると、時代の流れの中に沈んでいったのも分からなくはない。
  • 野茂英雄以降の日本プロ野球地盤沈下(野球自体の人気低迷)などに加え、スポーツノンフィクションの寿命の短さも感じる。無名のアスリートを扱ったものの方が時代と関係なく素直に読める。
  • 「江夏の21球」スタイルでNFLノンフィクションが読みたいというのが昔からの願望。スーパーボウル史上最高のアップセットの第42回(NE-NYG)、最強の矛がなすすべなく崩れ去った第48回(DEN-SEA)、あるいは2007年のAFCチャンピオンシップ(NE@IND)など。いくらでも読みたい。
  • 石戸諭の解説(「熱量の多寡」「描く側と描かれる側には常に緊張関係がある」)も良い。

樋口薫「受け師の道-百折不撓の棋士・木村一基」

受け師の道 百折不撓の棋士・木村一基

  • 図書館活用。かなり前にリクエストを入れていたものが、王位失冠とともに到着するという妙なタイミングに。
  • 中日新聞の夕刊に連載されたものらしいですが、思い入れの感じられない熱量不足の文章で、ネット上の諸記事に比べて圧倒的に退屈。トークショーの書き起こしは楽しい。
  • 2016年の王位戦、「『七番勝負全体の感想は』と尋ねられ、木村の思いが決壊した。声を詰まらせ、天を仰ぐと、質問を手で遮った。『普通の記者なら心を鬼にしてもう一言聞くかなと思ったけど、僕はもう聞けなかった』と、新聞三社連合の藤本裕行は振り返る」というのが泣ける。
  • 「負けと知りつつ、目を覆うような手を指して頑張ることは結構辛く、抵抗がある。でも、その気持ちをなくしてしまったら、きっと坂道を転げ落ちるかのように、転落していくんだろう」とは至言。

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小林よしのり「新ゴーマニズム宣言SPECIAL:戦争論(2)~(3)」

新ゴーマニズム宣言SPECIAL戦争論 (2)  新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論〈3〉

  •  図書館活用。
  • パラダイムシフトを引き起こした1作目ほどの刺激や熱量はない印象。
  • 刺激や熱量というよりは新鮮さの問題かもしれない。反米保守路線が固着していて揺らぎがない分、読物としての面白味に欠けるということかも。
  • 「国防論」「天皇論」辺りは目を通そうかと思っていましたが、取り敢えず打ち止め。