東浩紀「ゆるく考える」

ゆるく考える

 

  • 図書館活用。文庫化されたようですが単行本の方。「ぼくの『平成20年代』を集めたエッセイ集」であり、「長い試行錯誤の末、ようやく批評家として『やるべきこと』を発見した、その過程の文章を集めたもの」。
  • 中心となる第二章は「震災後、ぼくはそのすべてが虚しいと感じるようになり、生き方を変え」る前の、「ゲンロン戦記」で言うところの「人々の無意識の意見を情報技術で集約し可視化することで、合意形成の基礎にすえるべきではないかという新しい民主主義のありかたを提唱」していたころの文章ですが、批評の無力さへの絶望が誠実に吐露されていて、もがいている感じが生々しい。
  • ソクラテスポピュリズムによる死(「おまえはなんかあやしい、嫌なことをいう、みんなの空気に水を差す、だから死ね」)は興味深く、プラトンソクラテスの弁明」は読んでみたい(「もっとも心を打つのは、彼が論理では勝てないことをよく承知し、それについてもはっきり語っていることである。彼は、人々が論理を選ばないことをよく知っていた。しかしそれでも論理を選び、死刑を受け入れるのだ」)。
  • 「まじめであるとは、たいていの場合、その行為の対象がまじめに取り組むべき課題であると信じていることも含む」という指摘には思わず膝打ち。

「ムトゥ 踊るマハラジャ」

『ムトゥ踊るマハラジャ』5.1chデジタルリマスター版(字幕版)

  • NHK-BSプレミアムで4月21日放送。K・S・ラヴィクマール監督。1995年。
  • 1998年の日本での突発的ブームは記憶していますが、歌って踊るインド映画のエキゾティシズムだったんだろうか。インド映画史に残る傑作ではなさそう。
  • 「きっと、うまくいく」など、インド映画の傑作と呼ばれるものは機会があれば観てみたい。

「選択5月号」

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  • メモ
  • 米政権「アマゾン解体」の現実味-「反トラスト法」の運用が大転換
  • 「アリババ叩き」と習近平の焦燥-ハイテク企業「失速」の重い代償
  • 現代史の言霊(37)五月の薔薇-仏大統領選でミッテラン当選(1981年)
  • 菅はいつ「二階切り」に踏み切るか-強まる「安倍・麻生」への依存
  • 菅「ワクチン失政」の命取り-補選「全敗」国民不満が膨張中
  • 政界スキャン(435)-復権狙う「安倍一族」の野望
  • 政治家の嘘で汚れた「東京五輪」-どこが「安全で安心な大会」なのか
  • トヨタで発覚「車検不正」の悪質-「人名軽視」の社風がまた露見

Various Artists「猫も杓子もツイスト レディメイド未来の音楽シリーズCDブック編02」

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  • なかなか発送されなくてヤキモキしましたが、タワレコでなんとか確保、したものの環境の変化もあって聴き込むのがすっかり遅くなった。
  • 1作目「夜遊びに疲れてしまった」はめちゃくちゃハマったんですが、本作は今ひとつピンとこない。「おなじみのメロディのダンス・ミュージック化」というコンセプトが今欲しいテイストと違うのかもしれない。
  • という中ではロス・ブラジリオス「ノー・テ・エスコンデ」が良かった。
  • シリーズとしての素晴らしさは疑いもないので引き続き買う(というか買ってある)。

爪切男「死にたい夜にかぎって」

死にたい夜にかぎって (扶桑社文庫)

  • 車椅子の女性との初体験、唾液を売る女性のパートは既読だった(どこかのウェブで無料公開されていたはず)。
  • サービス精神が旺盛なせいかエピソードトーク集のような印象。演出過多な文章が好みではない。

都築響一編「Neverland Diner-二度と行けないあの店で」

Neverland Diner 二度と行けないあの店で (ケンエレブックス)

  • 図書館活用。「捨てられないTシャツ」の続編的位置付けで同様のコンセプトですが、写真がないのは少し寂しい。
  • 今も手元にあるTシャツと二度と行けない飲食店の違いしかないはずなんですが、こちらの方がかなりウェット。思い入れたっぷりに若かりし日の自分語りをするパターンもそれぞれに面白いのですが、トーンが似通ってくるので食傷気味になる。
  • サラッと振り返るに、ポルトガル最南端の田舎レストラン、大久保の無許可営業ロシア食堂、自宅の居間で営業していた店、バンコクの立ち食いサラダバー、祇園のフリークスお茶屋辺りは鮮やかな印象。比嘉健二のフィリピンパブにハマった話も面白かった。
  • 高野秀行の「二度と行けないあの店」ではなく「密入国+強制送還二回でビザ発給停止」で「インドという国自体」に二度と行けないというのも可笑しい。
  • 読んでいると食欲が刺激されて困る。ファイヴスター(ニュヨーク)のパラク・パニア/ボンベイ(新宿)のサグ・パニールは我慢し難く、にしきや(レトルト)のパラック・パニールを注文した。