御厨貴/松原隆一郎 「政治の終焉」

政治の終焉 (NHK出版新書)

  • シャローでナイーヴな書生論議に走る松原隆一郎御厨貴が受け止める構図で、丁々発止で盛り上がるという感じではありません。また、2012年末から2013年頭の対談で、安倍政権の無双状態が見通せていないのでリアルタイムでの分析としてはいかにも弱いですが、そんな中でもハッとしたのはたとえば以下の点。
    • 「私はああいう辞め方をした総理大臣を出したことが、自民党がダメになった証拠だと思う。コトは安倍さん個人に還元できる問題ではなかったはず」
    • 竹下登という調整の超ベテランが亡くなって10年余、『長期多角決裁』の妙味を、みな知らなくなってしまった」
    • 「少なくとも、教科書的な二大政党制ではなく、『変形された一大政党制』と言ったほうが近いですよ」
    • 「それについては、吉田茂が一役買ったわけです。彼は戦前の軍部を過剰に悪役にして、そのかわり戦後日本は商人国家、商業国家で行こうと考えた。商業国家ならば相対で貿易を行うので、お互い平等だろうというわけです。そういう前提に立てば、『対等』という建前のもと、そこに責任論が生じるわけがない。吉田茂の戦後の功罪について言うならば、『功』はともかく『罪』のほうは、責任という概念をかなり曖昧にしたことにあると思う。それは国民に責任なんか取れないという彼の愚民観から来ているわけです」
  • 常識に類することなのかもしれませんが、「本来の保守というのは、中間集団を重視」するという視点には個人的には蒙を啓かれました。