- 2009年6月にランス・アームストロング「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」を読んで感銘を受けた後(「ツール・ド・フランスは単なる自転車レースではない。それは試練だ。ツールは僕の肉体を試し、精神を試し、そして道徳的にも僕という人間を試すのだ」)、ツール・ド・フランス7連覇を剥奪されたこと、自らドーピングを認めたことなどは聞きかじっておりましたが、全米アンチドーピング機関(USADA)と国際自転車競技連合(UCI)の関係性などが、今ひとつ分からずモヤモヤとしていたところ。
- 本書刊行時点(2012年9月)では、ランス・アームストロングの処分は決定しておらず、ペーパーバック版あとがきの時点では処分が下って本人もドーピングを認めていたという時系列が醸し出す生々しさ。聞き書き形式によるバランスの良さもあってガツガツと一気に読了しました。
- 自転車競技界のドーピング汚染の実態やそれをもたらす構造などが(当事者なので当たり前ですが)極めてリアルに語られているのですが、単にランス・アームストロングを告発するだけではなく、自転車競技界のあり方までをも問うと同時に、タイラー・ハミルトンの挑戦と挫折と再生のメモワールとなっているところが実に感動的。