ローレンス・ウェシュラー 「ウィルソン氏の驚異の陳列室」

ウィルソン氏の驚異の陳列室

  • 柴田元幸「死んでいるかしら」収録の「他人のフンドシ」で「この1年で読んだなかでいちばん面白かった」と紹介していた本。
  • お高めの値段にもめげず購入してみましたが、とにかく文章がガチガチに固い。原文も相応に衒学的なんだろうとは思うのですが、第?部の冒頭など異様に読み難いのは、誤訳も含め、翻訳が悪いという気が(直感的には)します。
  • 例えば、原文を読んでいないので判断が難しいのですが、訳文から推測する限り、「ヴァニタス・ムンディ絵画」というのは絵画ではなく、実物を組み合わせた3次元の作品ではないでしょうか(ウィキペディアにも「解剖した人体の骨格や組織を樹脂で固め、盆栽風ジオラマを作成したことでも知られる(中略)フレデリクスは自宅5部屋にこれら標本や作品類を展示し、『repository of curiosities』(『驚異の部屋』)と名づけて公開した」とあります)。
  • 本質的には、?カリフォルニアに実在するジュラシック・テクノロジー博物館の魅力(奇妙な陳列物の数々)、?館主ウィルソン氏の人と半生、?16世紀に流行したヴンダーカマーに発症する博物館の歴史、の3つを中心に、分量的には長めのエッセイ2本でまとめた、とぼけたような味わいの作品ではないかと想像するのですが、どうでしょうか。
  • 納得がいかず、上述「他人のフンドシ」を再読したところ、こなれた文章で引用されていてこれがやっぱり面白く、良訳で読みたかったなという失望感は残りました。
  • インターネットの普及により面白さが損なわれたタイプの本ではないかという気もしないではないです。