洪自誠 「菜根譚」

菜根譚 (岩波文庫)

  • 通俗的な処世訓や道徳規範といった内容で、正直内容的には全然面白みを感じませんでしたが、文章的に響くものは一部あり。以下、ザッと通読して印象に残ったもの。
    • 耳中、常に耳に逆うの言を聞き、心中、常に心に払るの事ありて、纔かに是れ徳に進み行を修むるの砥石なり。若し言々耳を悦ばし、事事心に快ければ、便ち此の生を把って鴆毒の中に埋在せん。
    • 軒冕の中に居りては、山林的の気味なかるべからず。林泉の下に処りては、須らく廊廟的の経綸を懐くを要すべし。
    • 悪を為して人の知らんことを畏るるは、悪中にもなお善路あり。 善を為して人の知らんことを急にするは、善処即ちこれ悪根なり。
    • 風、疎竹に来たる、風過ぎて竹は声を留めず。雁、寒潭を度る、雁去って潭は影を留めず。故に君子は、事来たって心始めて現れ、事去って心随って空し。
    • 輭中に放過せざれば、忙処に受用あり。静中に落空せざれば、動処に受用あり。暗中に欺隠せざれば、明処に受用あり。
    • 逆境の中に居らば、周身、皆鍼砭薬石にして、節を砥ぎ行を礪きて、而も覚らず。順境の内に処らば、満前、尽く兵刃戈矛にして、膏を鎖し骨を靡して、而も知らず。
    • 小処に滲漏せず、暗中に欺隠せず、末路に怠荒せず、 纔かに是れ個の真正の英雄なり。
    • 事を議する者は、身、事の外に在りて、宜しく利害の情を悉すべし。事に任ずる者は、身、事の中に居りて、当に利害の慮を忘るべし。
    • 讒夫毀士は、寸雲の日を蔽うが如く、久しからずして自から明らかなり。 媚子阿人は、隙風の肌を侵すに似て、其の損を覚えず。
    • 纏脱はただ自心に在るのみ。心了すれば、すなはち屠肆糟廛も居然たる浄土なり。然らざれば、縦い一琴一鶴、一花一卉の、嗜好は清しと雖も、魔障は終に在り。語に云う「能く休すれば塵境は真境と為り、未だ了せざれば僧家も是れ俗家なり」と。信なるかな。
    • 釈氏の随縁、吾が儒の素位、四字は是れ海を渡るの浮嚢なり。蓋し世路茫々として、一念全きを求むれば、則ち万緒紛起す。寓に随いて安んぜば、則ち入るとして得ざるはなし。
  • やはり四書五経、あるいは「老子」、諸子百家を離れて「史記列伝」か、と色々作戦は考えますが、うまくのめり込めるかどうか。攻略着手はしばらく先になりそう。