冨田恵一 「ナイトフライ−録音芸術の作法と鑑賞法」

ナイトフライ

  • 一つ一つ音源を確認しながら非常に楽しく読了。こんなに深く緻密に音楽を聴き込めるのかという驚き。久々に充実した音楽(再)体験でした。
  • 終始、目から鱗が落ちまくる濃密さですが、たとえば以下は特に印象に残っている点。
    • 複雑さを正しく伝えるために伝統的なフォームが不可欠
    • 「I.G.Y.」におけるリズム的なしかけ
    • 「グリーン・フラワー・ストリート」におけるジェフ・ポーカロのプレイをベースとしたサンプリングによるドラム・パートの構築
    • 「ルビー・ベイビー」のグレッグ・フィリンゲインズのソロ冒頭はキンクス「ユー・リアリー・ガット・ミー」の引用
    • 「マキシン」のマイケル・ブレッカーのソロは2つのテイクの合成
    • 「ニュー・フロンティア」におけるエイブラハム・ラボリエルのベースの躍動感(特に「0:45で聴かれる『//ラソ・ラ』という音符の長さ、ニュアンス」)
    • 「ナイトフライ」の変則的な楽曲構造
    • 「ザ・グッドバイ・ルック」における「1コーラス目において『Won't you pour me a Cuban breeze Gretchen』にあたる部分が、2コーラス目においてはギターのメロディに差し替わる」という演出
  • ステイーヴ・ジョーダンのドラム・クリニックのエピソード(「ドラムばっかり叩いてちゃダメだよ〜ん。曲、何はなくとも曲から!」)も面白かった。
  • あとがきも好印象。「最初に書く本はきっとディスク・ガイドだろうと勝手に思っていた」とのことですが、冨田恵一のディスク・ガイド、是非読みたいです。