「山猫<完全復元版>」

山猫 イタリア語・完全復元版 [DVD]

  • 菊地成孔曰く「元祖レイブ映画」。濃厚な諸行無常感と豪華絢爛な舞踏会のコントラストが趣深いですが、187分はいかんせん長い。
  • 統治者側のドラマ。小沢一郎が演説で引用したのも分からなくはない(「現状を維持したければ変わらねばなりません」)。
  • 淀川長治蓮實重彦山田宏一「映画千夜一夜」で、淀川長治が「金持をこんだけ映画にする人ないなあと思うて。(中略)もういい気持でね。こんな金持になれたらどんなにいいだろうって観た、ぼくは」、「想像じゃないのね。だからいかに美術いうものが、豊かなところから発生するかわかるね」、「ヴィスコンティ亡くなったとき、こんなつらいことなかった。イタリアはこれで終わりになるか思った。(中略)もうこの貴族きなくなったか思ったらつらかった。映画のなかの一番の贅沢を持ってた人やなあ、ルキノ・ヴィスコンティいう人は。ぼく、好きだったねえ」と溢れんばかりの敬愛を示したところの貴族の洗練は、「義弟のフェルディナンドは先を見る父親ではなく、子に残すべき財産を豪奢な生活で散じたのだ。しかし、こうした贅沢の結果がタンクレーディでもある。これは当然のことだ。先祖たちが惜しみなく散在することなくして、我が甥のような洗練された魅力を身につけることは不可能だろう」という劇中のセリフでも示唆。
  • 「人を導きたい者に必須の己を欺く能力が私にはない」、「我々シチリアの人間はもう老いた。壮大で雑多な文明の重圧を2,500年も感じてきたのだ。だが全て外来で自ら創った文明ではない。ずっと植民地の民だった。これは我々の責任だ。だが我々は精根が尽き果てた」、「シチリアの人間が求めるものは永い眠りだ。いい贈り物を渡すためでも眠りを妨げる者は憎まれる」、「ここではあらゆる行動が忘却への渇望なのだ。我々が色事を好むのも忘却への欲求だ。傷害沙汰は死への憧れ。我々の怠け癖や強烈に甘いシャーベットも堪能なる停滞への欲求、つまり、死への憧れだ」等、小沢一郎ならずとも引用したくなる含蓄のある台詞多数。