ベニスに死す

ベニスに死す (字幕版)

  • なにしろグスタフ・マーラー交響曲第5番の第4楽章が良い。「ワインを飲みながら温かい風呂につかっているようなこの『アダージェット』は、倒錯するとろけるチーズのような不思議な愛の陶酔を見事に歌っていた。それもそのはず、この時期のマーラー先生は20歳近く若い新妻アルマ嬢との新婚生活の真っ只中だった」(吉松隆)とのこと。
  • 冒頭から、そのマーラーに乗せて、化粧をした異様な老人、話の通じない船頭、饒舌なホテルマンと続いていくデヴィット・リンチのような悪夢めいた異邦人感覚。
  • 「自然の世界にも芸術の世界にもこれほどまでに巧みな作品をまだ見たことはないと想ったほど」の完璧な美というコンセプトを生きながらに具現化するビョルン・アンドレセンが本作の推進力と説得力の源泉。