- BSテレ東で5月11日放送。山田洋次監督。1982年。シリーズ第29作。
- 冒頭の夢(落語「抜け雀」の捻りのないコピー)の後に目覚めのシーンがなく、夢かどうかも分からないままタイトル、そしてタイトルロールに津嘉山正種のコントなし(代わりに本編に登場)。お約束を打破する気概は良いが成否は不明。
- 人間国宝(片岡仁左衛門)に気に入られる寅次郎という「釣りバカ日誌」パターンは第19作「寅次郎と殿様」等いくつかあったような。通りすがりのお爺さんの切れた鼻緒を手持ちの手拭いを割いて直してあげるという出会いのシーンがとても良い。「何やって儲けた?おじいちゃん。茶碗焼いただけでこれだけの家は建たねぇもんなあ」という軽口にギョッとする人間国宝(「キツイこと言いよる」)も良い。
- 丹後の夜のセクシーな緊張感はシリーズでも類を見ないシリアスさ。アイコン化していく車寅次郎へのカウンター。第27作「浪花の恋の寅次郎」の松坂慶子との一夜といい、シリーズのお約束とはいえセックスぐらいしろと言いたくもなる。
- あそこで寝てしまえば後半の鎌倉でのデートでのすれ違いが活きてくると思うのですが。これでは意味不明な延長戦のような感じで、帰りの電車で落涙というのも今ひとつ腹落ちが悪い。
- ヒロインかがりのテーマ曲がこれまたよろしくない上に、連発されていて悪目立ち。
- おばちゃんとタコ社長のアルゼンチンタンゴはもうちょっと面白くなりそうな気がするのですが。音楽までつけてしまうと興冷め。