五代目古今亭志ん生「落語蔵出しシリーズ(4)」

落語蔵出しシリーズ(4)饅頭怖い/疝気の虫/天狗裁き

  • 「饅頭恐い」(1956年8月26日。NHK)は、初めて実演音源聞きましたが、うー恐いひー恐いと言いながらむしゃむしゃ食べる様子はクラシカルな破壊力があって、意外に笑える。
  • オクルマとはノシメトンボのことだろうか。花魁蜘蛛のマクラ(「ちょっと寄ってらっしゃいよ」)は「疝気の虫」と共通。
  • お目当ては「疝気の虫」(1963年5月29日。東横ホール)。「羽織の幇間」を演る予定が、前の三遊亭圓楽の「野ざらし」と被った(「お汁粉の後に安倍川」)ため、「私にまかしていただいて」ということで艶笑噺に突入。病後のゆったりしたペースが良い。
  • 「やんなっちゃった」は当時流行の牧伸二のパロディでしょうか。また、誘拐の話題も出ますが、後に本田靖春のノンフィクション「誘拐」で扱われた吉展ちゃん誘拐殺人事件のことでしょう。笑いにするか!とドキッとしましたが、まだ公開捜査に切り替わった直後で話題沸騰の頃。犯人が逮捕され、殺害を自供するのはおよそ2年以上後のこと。
  • 睾丸こそネタにしていますが、色っぽいところはなく、バカバカしくて楽しい話。「艶笑噺といっても、志ん生のそれは、いやらしさ、露骨さがない。ほほえましい落語になっている」とライナー(保田武宏)に書いてありますが、志ん生以外の「疝気の虫」にはいやらしさがあるのだろうか。
  • また「元気なころの志ん生は、サゲで『別荘がねえ』と、困ったような顔つきで探しながら楽屋へ降りて行った。病気で倒れてからは、これが出来ないので、『別荘を探したんですが、どうしてもめっからなかった』とサゲていた」とのことですが、この時は「別荘へ逃げなきゃいけねえ、んー、別荘・・・」というどちらかというと前者に近いサゲ。仕草が見たい。
  • 天狗裁き」(1957年12月5日。NHK)は「CD倶楽部名人会(29)」収録と同じ音源ですが、マクラの中の「帆立貝また蛤にめぐりあい」で始まる小咄がカットされずに収録されています。