「早春(デジタル修復版)」

早春 デジタル修復版 [Blu-ray]

  • NHK-BSプレミアムで6月14日放送。小津安二郎監督。1956年。
  • 東京物語」(1953年)の次作、「東京暮色」(1957年)の前作。
  • 浮気からの夫婦再生よりは宮仕えの悲哀の比重が高め。設定こそ30代ですが、ミドルエイジ・クライシスからのスターティング・オーヴァー。
  • 目がでっかくてといとズベ公で煮ても焼いても食えないから「金魚」というネーミングセンスが凄い。岸惠子ではズベ公感が足りない気がしましたが、「東京暮色」のヒロイン(有馬稲子は更にズベ公感が希薄)の当初のキャスティングは岸惠子だったようで、小津安二郎としてはこれで満足だったのか。
  • 浦邊粂子のおでん屋の瓢箪柄の暖簾が最高に格好良い。欲しい。
  • 鰹節を削っていた杉村春子の旦那役は宮口精二(チラッとしか映らないので気がつかなかった)。
  • ラストの和解が唐突で腹落ち感がないのは「お茶漬の味」同様。夫婦再生の姿がぎこちないのは生涯独身の小津安二郎の限界なのか。夫や仲人からの手紙で「よりやり直そう」と思い直したとも思えないのですが、他人の真情などどこまでいってもわかり得ないという諦観に見えないこともない。
  • 淡島千景がムチッと肉感的でいやにセクシー。婀娜な年増ってこういう美学なのかという気がします。