暉峻康隆「落語藝談」

落語芸談 (小学館ライブラリー (117))

  • 図書館活用。柳家権太楼/塚越孝「権太楼の大落語論」で紹介されていたもの。入手困難なようですが図書館で借りられてラッキー。
  • 八代目桂文楽の前半生が意外に破天荒で驚き。亡き師匠(八代目桂文治、五代目柳亭左楽)への悪口や、小さんや談志への苦言等、あいつはこうだこいつはどうだと、老害的であまり良い感じはしない。
  • 期待していた五代目柳家小さんはストレートな芸談が中心で期待していたほど面白くなかった。「あっしは子供の自分に、自転車でひかれて、自転車があっしの腹の上に乗っかって、ひきっぱなしでいっちゃった。人力車が向こうのほうから来て、『このヤロー、待てえ』とあっしを人力車に乗っけて、ウワーッ自転車を追っかけて、とっつかまえて、文句言っている。『なんだった黙って行きやがるんだ』なんて言って。それだって、あっしとはなんの関係もない。そういうのが昔はいたんです」というのは素敵なエピソード。
  • 長屋の花見」に関する四代目小さんの教え「向こうへ行けば大勢人も出ているじゃねえか。人込みのなかで、がま口の一つや二つ、落っこっていねえこともないだろう。向こうへ行くと酔っ払いも大勢いるよ。それで、『兄弟』と言えば向こうで『兄弟でねえ』なんて言いっこないから、向こうも『兄弟』かなんか言うだろうから、『一ついこうじゃねえか』と、向こうの本物をついでもらって、キューッと飲んで、こっちの偽物をついで逃げちまえばいいなんてね。そんな淡い望みがあって、期待を持って行かなきゃ、それはダメなんだが、そのことを言わなくてもいいんだ」が「『ごらんなさい、酒柱が立ちました』(中略)は心から言わなければいけない。それでなきゃこの噺の値打ちがないんだ」が素晴らしい。
  • 当時も、時代は変わってしまった、せせこましく慌ただしくなってしまったと嘆いていますが、スマホとSNSの時代になっても現役で生きてるんだから大したもの。