ピーター・ホップカーク「ザ・グレート・ゲーム-内陸アジアをめぐる英露のスパイ合戦」

ザ・グレート・ゲーム―内陸アジアをめぐる英露のスパイ合戦

  • 図書館活用。
  • 元防衛次官の西正典氏がイギリス留学した際(1982年)、マイケル・ハワードから「西くん、19世紀の終わりに我々イギリスはソ連とアフガンで3度戦ったと。その3度の英ロ間のアフガニスタンをめぐる戦争は、唯一、そして絶対にこれ以外はないという教訓をロシアにもイギリスにももたらした。それは何かというと、アフガニスタンという国はヤギと羊とアフガニスタン人意外な住めないということ」と教えられたという超絶面白いエピソードを紹介するとともに、本書を紹介していました。
  • それを目にしたのももはや10年ほど前ですが、当時邦訳は入手困難だったのでペーパーバックを購入して満足してしまい、例によってそのまま積みっ放し。図書館活用習慣がついたところに今般のアフガン情勢(米軍撤退からのタリバン政権復活)が重なり借りてみました。
  • あとがきを読んでビックリしましたが「紙数の都合上、著者の了解を得て約四分の三に縮小」した抄訳とのこと。ペーパーバック版と見比べてみると、割愛の仕方が結構微妙なだけでなく、写真のキャプションや巻末の人名索引も含め、あまり出来が良い翻訳本とはいえなさそう(西元次官曰く「翻訳が出ていますが、英語のほうが若干面白いかもしれない」)。
  • 南下政策の一局面ですが、やたらに面白いエピソードの連続でグイグイ読んでいくと日露戦争からの英露協商というあっけない幕切れに呆然。途方もない狡猾さと残虐さの連続で、中央アジアアフガニスタンがいかに荒涼・殺伐とした世界であるか、腹の底まで染みてくる。
  • ソヴィエト革命後の続編「東方に火をつけろ-レーニンの野望と大英帝国」の他、「チベットの潜入者たち-ラサ一番乗りをめざして」や「シルクロード発掘秘話」といった著作も借りられるようですが、またの機会に。
  • 現代の世界地図と見比べながら読むと楽しいですが、アラル海の縮小ぶりには改めてビックリする。