- 14章の締めの一文「鳥にだって学ばなくてはならないことがたくさんあるのだ」というのにグッときたのですが、清水俊二訳だと「鳥も学ばなければならないのだ」、そして原文は「Birds have to learn too.」だという。翻訳って難しい。
- 因みに「ギムレットを飲むには少し早すぎるね」は、清水俊二訳だと「ギムレットにはまだ早すぎるね」、原文は「I suppose it's a bit too early for a gimlet」。これは清水俊二訳の方が若干洒落ているか。
- 第1章の「迷い犬」という訳語も、清水俊二訳の「迷い子の犬」というのが情感があって好きだったので、微妙な違和感を覚えます。
- 訳者による作品解説もいつもながら見事。スコット・フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」との類似など全く思い至りませんでした。
- (チャンドラー作品の常として)華麗すぎる文体に気を取られているとストーリーラインを見失いそうになりますが、何度読んでも溜息の出るような第1章から何度読んでも胸に染みる最終章まで、文句のあろう筈もなし。
- 「グレート・ギャツビー」を再読する気には当面なれないので、ダシール・ハメット「マルタの鷹」でも読んで「カルト的オフビート性」を確認してみようかというところ。