- 他人の手帳やノートを見るのが好きなのですが、黒澤明の下手な字の汚いノートには笑いました。もちろん内容は非常に興味深いですが。
- キャスティング絡みのこぼれ話が面白い。
- 洋装の津島恵子の写真が劇中の志乃よりはるかに綺麗に見えるのはなんでなんでしょうか。
- 「この脚本の根底にあるのは、トルストイの『戦争と平和』なんです。もう何十回読んだかわからない」、「恐らく文学の中でこんな面白い文学はないのではないかと思います」という発言は興味深い。合戦の際の菊千代の衣装のイメージの源泉は、オペラ「イーゴリ公」における「韃靼人の踊り」というのも意外。昔の人はよく古典文化に親しんでいて尊敬します。
- 23戸101人の家族構成・組分を明記したメモ「儀作の村の戸籍」は凄みがあります。
- 五郎兵衛の髷が変だなと思っていたのですが、稲葉義男が「月代と額の間をぼかす塗り物にかぶれたので、自髪をバリカンで刈るという大胆な髷」という理由を知って納得しました。
- その稲葉義男は緊張気味で、スカウトされる際の「ハハハ・・・・・ご冗談を」が固すぎて走らされたり歌わされたり、「それからもう一つ相談があるが・・・・・橋向こうの離れ家三軒とこの水車小屋・・・・・これを刈り入れまでに引き払って貰いたい」も固すぎて死ぬほどやり直しさせられたり、かなり気の毒。
- 撮影中止中に千秋実と釣りをしながら「今まで使った金を捨てるようなことはしやしないさ会社は。僕の映画が当たっている間は無理は通るよ」、「クライマックスの合戦シーンは、わざと最後に残しておいた。その前に会社から中止命令がくると思ったから。少しでも合戦シーンが撮ってあったら『もうそれでいい』と、会社が言うのはわかっているから」という発言から、大幅に期間と予算をオーヴァーしつつもかなりしたたかというか冷徹な見切り具合であることが伺えます。
- 有名な燃える水車小屋の撮影ですが、「カット、カット、駄目だよ、燃えるタイミングが全然合ってないじゃないか。帰る!」の最後の「帰る!」が唐突で笑えます。
- 「毎晩毎晩とにかく一緒の籍で酒を飲んで飯を食って、夜中の1時位まで話していないと気がすまない(千秋実談)」というのも凄いですが、抜け出すと翌日現場で仕返しされるとか、夜のビールのためにスタッフ・俳優全員午後は水分摂取禁止というのはやり過ぎ。さすが天皇。
- 霙降る二月の撮影で半裸で暴れる三船敏郎、この時34歳。若かった、と言い切れる歳でもないような気が。
- 裏山のシーンのための野菊つみとか、砂埃用の焚火の灰集めとか、行為はともかく物量に圧倒されます。
- 第三章以降はただあらすじを追っているだけに近いですが、音声の聴き取りづらさを考えればこれはこれで理解の助けになります。
- 「天の声みたいなものがあるね。一緒にやってるみんなになにかが乗り移ったみたいになることってあるんだよね」という鬼気迫る撮影だったことはとても良く分かりました。