Ahmad Jamal 「Jamal at the Penthouse」

ジャマル・アット・ザ・ペントハウス

  • 「水上の遊技を捉えた『マイルス・アヘッド』に対して、洒落たホテルの最上階を切り取ったアルバム・カヴァーを使ったのが、このシカゴ出身のピアニストの傑作アルバム。どちらの作品にも横溢するのは、多幸感、という他ないイメージ」で、「中音域を弦楽に任せて、夜景の中で瞬く灯に倣う高域の鍵盤。オードリイ・ヘプバーンに憧れる女性に聴かせたい、典雅なジャズ」という解説に偽りなく、「マイルス・アヘッド」(1957年録音)と双子のようなリュクスなアルバムで、大変良い感じ。
  • 冒頭「コム・シ、コム・サ」から恐ろしくエレガントで、アルバムの第一音からギュギュッと掴まれっ放しですが、マイルス・デイヴィスが取り上げた代表曲「アーマッズ・ブルース」が1番退屈なのはどういう訳か。
  • 甲乙付けがたい演奏揃いですが、中でも個人的なベスト・トラックは2曲目「アイヴィー」。菅原正晴によるライナーの解説のとおり「アドリブの後半部分の旋律の美しいこと、美しいこと」。
  • アーマッド・ジャマルというと「マイルス・デイヴィスにも大きな影響を与えた」という形容がお約束ですが、確かに「マイルス・デイビス自叙伝」をチェックしてみると、「1953年に姉のドロシーが教えてくれた、アーマッド・ジャマルに、すっかり夢中になっていたんだ」と言っています。具体的には、「間に対するコンセプト、タッチの軽さ、控えめな表現、音符や和音や楽節のアプローチに一発で虜になってしまった」とのことで、「叙情性やピアノの奏法、グループのアンサンブルの重ね方に聴ける間の使い方なんかも、オレの好みにピッタリだった。アーマッド・ジャマルは、値すべき評価を受けたことがない偉大なピアニストだと、今でも思っている」と大絶賛。
  • 他方で、「ここで言っておくが、アーマッドがオレに大きな影響を与えたことは事実だ。だが、オレはアーマッドを聴くずっと前から、こんなフィーリングを好み、自分で演奏していたんだ、それを忘れないで欲しい。アーマッドは、オレがずっとやっていた音楽に、改めて目を向けさせてくれたんだ。まあオレを、オレ自身に連れ戻してくれたってわけだ」と言うのを忘れないところがいかにも。
  • アーマッド・ジャマルはまだご存命の様子。代表作はライヴ盤「アット・ザ・パーシング−バット・ノット・フォー・ミー」のようですので、機会があれば改めて。