中村計 「甲子園が割れた日−松井秀喜5連続敬遠の真実」

甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)

  • 松井秀喜の5連続敬遠ももう18年も前かと、思わず書店で手にとってパラパラと読んでみたところ面白そうだったので購入。その前に雑誌の記事で馬淵史郎監督(明徳義塾)のインタビューを読んだ記憶も購入を後押ししたか。
  • 選手たちが意外に淡々としている中、強い印象を残すのは馬淵史郎明徳義塾)・山下智茂(星稜)の両監督。この2人が相見えた偶然というか運命というか、カルマの深さに痺れます。これぞスポーツ・ドキュメンタリーの醍醐味という感じ。
  • 個人的には高校野球に教育的役割を求める山下智茂よりも、勝負に徹せずにはいられない馬淵史郎の方が好ましいですが、「この二人(5番月岩信成と9番北村宣能)に打たれるようなら野球やめろ」と言っていたという冷徹な見切りが格好良いです。
  • 高校野球を熱心に観たことはないのですが、日本高校野球界の在り方(特に職業監督の系譜)も中々に興味深く、ある意味日本のNCAAとでも言えましょうか。
  • 最終的には1点差ゲーム(最大点差2点)ですから、野球というスポーツにおいて珍しくタクティクスで勝ったと言える見事な例なのかもしれません。
  • 誰が書いても一定程度面白い作品になりそうな題材で、作者独自の才覚という程のものは感じられませんが、実際に作品として形にした努力には敬服すべきなのでしょう。