柴田元幸 「つまみぐい文学食堂」

つまみぐい文学食堂 (角川文庫)

  • なぜかこの夏は読書が好調。秋以降もこのままの勢いを持続したい。柴田元幸のエッセイ。吉野朔実の表紙及び挿絵は今一つ好みでなかったのですが、書店でたまたま開いたページがO・ヘンリーの評価に関する中々面白い文章だったため購入。
  • もし作品世界の中に入ったら、という妄想が時折挟み込まれるのですが、「アメリカン・サイコ」の主人公にファッション評定される柴田元幸というのが可笑しかった。
  • 「鯨の回想風」で紹介されている、ハーマン・メルヴィル「白鯨」における鯨ステーキと鯨油揚げパンも印象的でしたが、「空腹、飢え、断食」で触れられている同じくメルヴィルの「書写人バートルビー」は、先日VOAでも簡易版が流れていましたが、妙に引っかかる奇妙な作品でした。
  • 「首なし鶏マイク(Mike the Headless Chiken)」という存在を知りませんでしたが、確かにこれは驚き。
  • 特に面白かったのが「豚肉を食べましょう」。ボブ・ディランジョー・カーターから「あんた、豚肉食わないだろ?」と遠回しにユダヤ人であることを確認され、「はい、食べません。豚は三分の一が猫で三分の一が犬で三分の一は鼠ですから」とマルコムX(イスラム教徒)の言葉を引用して答えたというエピソードも面白いですし、紹介されているチャールズ・シミックのエッセイ「私はなぜある種の詩をその他の詩より好むか」(豚が一緒に写っている一枚の写真とタキシード)もすこぶる面白い。