Various Artists 「The Bossa Nova」

ザ・ボサノヴァ

  • ボサ・ノヴァに関しては、唯一所有していた「オ・メリヨール・ダ・ボサノヴァ」という3枚組のコンピレーションが、曲目(ただでさえポルトガル語)の表示がえらく見にくい上に解説もないため、どうにもこうにも気に入らなかったので売却してしまったところ。
  • これに代わるアイテムを、曲目及びアーティストについての日本語の解説が付いていることを条件に物色してみたところ、初心者向けのボサ・ノヴァのコンピレーションなどいくらでもあるだとう高を括っていたのですが、意外なほどにアイテム数がなくて愕然。
  • 致し方なし、という消極的な姿勢で本盤をチョイスし、小洒落たジャケットを小馬鹿にしつつ聴いてみましたが、ヴォリューム的にはこれぐらいが丁度良かったかもしれません。曲目のチョイスも主要なところは抑えられているように思いますが、選ばれている演者が適切かどうかまでは分かりません。
  • ここに収められている有名曲ですら認識があやふやだったのですが、これが「おいしい水」、これが「ジェット機のサンバ」と一つ一つ曲とタイトルが繋がってインプットされていく感覚が心地よく、1枚ものコンピレーションが身の丈にあっている感じです。
  • と言いつつも身の丈を超えたルイ・カストロの大著「ボサノバの歴史」を購入して読み始めているところ(まだ序盤しか読めていませんが、本書との関係ではルーシオ・アルヴィスとディック・ファルネイ(ボサノヴァ前史の重要人物)が収録されているのが嬉しかった反面、ジョアン・ジルベルトの曲が少ないのが残念)。入り口としては喚起力のある良盤なのかも知れません。
  • 「ヴィニシウスの哲学、美学の集大成と言える逸品。女性を、人との出会いを、バイーアを、サンバを、そしてブラジリアン・ミュージックの先達と自分のパートナーたちを賛美し、『サラヴァ!(祝福あれ)』と声をあげる」と解説されているヴィニシウス・ジ・モライス 「サンバ・ダ・ベンサォン(祝福のサンバ)」は、ピエール・バルーが映画『男と女』のサントラでフランス語版を歌っていたもの。
  • 菊地成孔大谷能生 「憂鬱と官能を教えた学校【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史」における、「その(アントニオ・カルロス・ジョビンの)楽曲構造には、ほとんどオーガニック&ナチュラルなレヴェルで、『樹木的』とでも言うべき音の組織が体現されています」という楽理の説明は殆ど理解できていませんが、「独特の希薄さを持ったその調性=世界像は、重力/無重力感をたたえながら、しかも都会感/世俗感が漂っており、まさにジョビン・サウンドとしか言えない独特なもの」という解説は直感的によく分かります。
  • 久方ぶりに手元に未聴CDのストックがゼロに。今夏から加入したUSEN・オン・フレッツで充足しているからか、音楽全般に関する好奇心が枯渇してきているのか。