Charles Webb 「The Graduate」

  • 10年以上前に、知己を得たオーストリア人に英語を教えてくれと頼んだところ、「取り敢えずこれでも読んでみたら?簡単だから」と言われて拝借したもの。その後の数度の転居を経て既に音信不通、今更返しようもなくなってしまいました。今になって冷静に考えれば、あまり教える気がなさそうな対応ですが、英語ネイティヴではなかったからなのか、むしろ日本語の練習をしたかったからなのか。
  • 長らく序盤を読みかけては放置ということを繰り返していたのですが、今回ふと思い立って読み始めてみたところで突然のブレークスルー(「タンタンの冒険」の英訳版セットを読んでいるのが効いたか)。
  • 映画でストーリーを知っていたこともあるでしょうが、本当に読み易い本で、腰が引けてきたベンジャミン(「for god's sake」の連発)と、それを逃さじと挑発するロビンソン夫人(「inadequate」呼ばわり)のやりとりなど、ダイアローグが活き活きしていてプアな英語力なりに楽しめました。
  • 映画「卒業」を観たときも思いましたが、モラトリアムの終焉を受け入れられない経済的に恵まれた環境にあるお坊ちゃんが神経症的に迷走する実に変な話。ロビンソン夫人の鮮烈なキャラクターの前にエレインがかすんでいて、ベンとエレインの心情の変化に自然な説得力が感じられないのですが、映画よりはコミカルな側面が強く感じられました。
  • チャールズ・ウェッブは本作の映画化により3万ドルしか受け取っていないそうですが、「およげ!たいやきくん」みたいなもったいない話です(全然関係ありませんが、子門真人は敬虔なクリスチャンで芸名はクリスチャンネームに由来しており、1993年頃「人間嫌いになった」と発言して引退したとのこと。大変驚きました)。
  • いずれにせよ、平易なものとはいえ、ペーパーバックを1冊読了することが出来てとても嬉しい。このモメンタムを大事にしたいので、「I Thought My Father Was God」辺りを読み継いでいきたい(「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」としてとっくに邦訳が文庫で出ているようですが)。