ガブリエル・ガルシア=マルケス 「コレラの時代の愛」

コレラの時代の愛

  • 2年振りのガブリエル・ガルシア=マルケス。2年前は海外出張で訪れたドイツからの帰国便の中で「予告された殺人の記録/十二の遍歴の物語」を読み始めたように記憶していますが、今回は夏期休暇で訪れた鹿児島旅行中に読み始めました。読み始めるのに少しモメンタムを必要とするので、フライト中という日常と隔離された状況がきっかけになっているようです。
  • その鹿児島旅行中に良い調子で読み進んでいたところ、(多分)バスの中に置き忘れたため、再購入。一度勢いを失ったのが痛かった。
  • 前作同様、幻想的・魔術的な要素は排除しつつも、マルケス印の神話的語り口は健在。ただし、そのスタイルで今回紡がれるのは純愛の物語。単線的なストーリーを500ページにわたって飽かず読ませるのは、やはり文章の巧さなのでしょうか。
  • とはいえ全体としては、ある女性を51年9ヶ月と4日待ち続けるという、ある種幻想的な枠組み。著者曰く「こういうストーリーは、現実というのはどの程度たわめ、ゆがめることができるのか、本当らしくみえる限界というのはどのあたりにあるのかといったことを知ることができるので、わたしは大好きなんだ。本当らしさの限界というのは、われわれが考えているよりも広がりのあるものなんだ」とのこと。
  • 感服させられるけれども琴線には触れないといったいつもの感じを予想していたのですが、本作は情感豊かで素直に感動しました。