- これも春具「オランダ・ハーグより」で紹介されていた興味を持ったアイテム。曰く「ケネディ政権について書かれたもので、この本で彼はピューリッツアー賞もとったのではなかったかな。ケネディー政権は当時のアメリカのぴか一のインテリを集めらてつくられた眩しいばかりの政権で、たとえば、フォード自動車からきて国防長官になったロバート・マクナマラ(彼は最後は世銀の総裁になった)、補佐官だったアーサー・シュレジンガー、ハーバードから転じて日本大使となったエドウィン・ライシャワーなど、ともかく当時のキラ星の精鋭でかためた政権を『ベスト・アンド・ブライテスト(最高で最優秀なひとたち)』と呼んだのです。彼らは当時『世界のために、米国はベトナムの共産化を阻止しなければならない』という使命感に燃え、戦線の介入拡大を主張した。その彼らの使命感が結局はアメリカをベトナムの泥沼に引き入れてしまった」。
- 1999年刊行の朝日文庫版が長らく入手困難な状況の中、2009年に二玄社から再刊されたことを知ったものの、機会があればそのうちにと先送りしていたのですが、このところ宮仕えの虚しさが耐え難くなり思わず購入。
- 内容はともかくとして、これを3分冊にするのは頂けません。上下二段組みにしてでも1冊で納めるべきだと思う。
- 虚無的になりそうな我が国の政治情勢ですが、「確かにアメリカの選挙政治は不完全だし、頭を下げて回るという安っぽさと卑屈さが伴う。選挙向きの性格をもたない人には、耐えられないところもあるであろう。しかし、そこには、とくに強力な人間、すでに特権と資力をもっている人間にとって、人間性を回復し、自らを顧みる貴重な鍛錬の場としての意味もある。その鍛錬を経たものは、選挙のけばけばしい安っぽさを乗り越え、国家の動向を肌に感じ、国民のもつ弱さに対し、理解とある種の愛着すら抱くことができるのだ」という一節が非常に印象的でした。
- 結果論という側面も多々感じられるのですが、怜悧で酷薄な秀才マクジョージ・バンディー、鵺のような八方美人ディーン・ラスク、表向き本心を隠して行動する組織人ジョン・マクノートン、野卑で力強い野心家リンドン・ジョンソンなど、必ずや似た人を思い浮かべてしまう人物描写パートが最大の魅力でしょうか。