柄谷行人 「インタヴューズ2002−2013」

柄谷行人インタヴューズ2002-2013 (講談社文芸文庫)

  • NAMあたりから柄谷行人への関心を失っていたのですが、やはり現実的、実践的になればなるほど退屈で刺激が乏しく、読み通すのがしんどかった。
  • 「一般に、知識人は、不可能なことを難しく書いていると尊敬するが、実行可能な積極的な提案をする者を嘲笑することがわかっているからです。だが、私はあえてそうした」「私は、資本と国家への対抗運動をさまざまに工夫している人たちが好きです。私のカントの解釈やヘーゲルの理解がどうの、という議論をしたがる人たちよりも」と本人が語っている通りではあるのですが。
  • メモ
    • 「しかし、世界資本主義が何とか七○年代以来の停滞を越えてきたのは、商人資本や金融資本のような蓄積によってではありません。そのような蓄積は、産業資本の蓄積、つまり、いわゆる実体経済によって支えられている。後者がないと、成立しないのです。事実上、世界経済を支えてきたのは、中国とインドにおける、膨大な新たな労働者=消費者の世界市場への参入です。逆にいうと、中国やインドにおいて脱農村化が進行すると、世界資本主義の限界が見えてきます。もう一つは資源の問題です。いままでとはケタ違いの量の資源が使い尽くされている。さらにケタ違いの量の廃棄物。人間と自然の交換関係(物質代謝)が根本的に破壊されつつある。したがって、産業資本的蓄積が長く続くということはありえない」
    • 新自由主義は国家を越えた資本の自由な移動を唱えます。そして、そのイデオロギーは、自己責任、勝ち組・負け組という流行の言葉が示すように、弱肉強食の社会進化論です。その意味で、帝国主義敵なのです。現在は、ヨーロッパをふくめて、中国、ロシア、インド、イスラム圏など旧『世界帝国』が争っているという意味で、まさに帝国主義的な段階です。僕の予想では、これはあと四十年ほど続く。しかし、このあとに、どこかがヘゲモニー国家となるということはない。その前に、資本主義的蓄積が終ってしまうから。大体、そういう見通しをもっています」