高野秀行「アヘン王国潜入記」

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

  • 高野秀行角幡唯介「地図のない場所で眠りたい」からのチョイスその1。「『自分はあれを書いたのだ』と心の支えになるような仕事」「『誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白く書く』という(中略)約二十年間変わらない(中略)スタンスを最もハードに貫いたのがこの本」と本人が語る名刺代わりの一冊。
  • 「正面玄関じゃなくて、中央政府の支配の及ばない裏口から入って茶の間を覗いちゃうみたいな」(角幡唯介高野秀行の特性を高度に発揮。「周囲で生アヘンをやった人間を高野秀行以外に知らない」と船戸与一も語るとおり、中毒になるほどどっぷり浸かるところも持ち味。
  • 本人曰く「自分の体験した材料でなにが書けるかと思ったときに、宮本常一の『忘れられた日本人』を読んで、ああ、これなんだと思った。要するに民族誌を書こうとするからこんな絶望的な気持ちになるんだけど、生活誌の路線だったら書けるんじゃないかって」とのこと。
  • 序盤の軍幹部三人衆やアイ・スンの何気ないスナップ写真が読了後に見直すと儚くて泣かせる。そういう意味では「特典写真23点を追加収録」しているというKindle版の方が良かったかも。