小野一光「<新版>家族喰い-尼崎連続変死事件の真相」

新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相 (文春文庫)

  • 高橋ユキ「つけびの村つけびの村-噂が5人を殺したのか?」契機で前々から気になっていた事件ノンフィクションを購入。
  • 丹念に取材されているものの、事件のあらましが浸透している現時点から見ると、もう少しディテイルにエグさが欲しいところ。高橋ユキのnoteでレポートされていた「玄関で、これで久芳見れるの最後かと思て『いってらっしゃい』言うてんのに、帰ってきやがって」「もう、明日にしようか」「最後やから、久芳に、皆一人ずつお別れの挨拶したり」といったゾワッとするようなやりとり(久芳さんの万座毛飛び降り強要)はあまり出てこない。
  • 演歌的な紋切り型でオチを付けるようなところがあって文章や分析に面白みはなし。
  • 40年以上搾取され続けた角田美枝子の人生の悲惨さ(10代から50歳近くまで売春強要)、角田美代子の実弟・月岡靖憲(グリコ森永事件の容疑者の一人)の犯行(弁護士と女子大生の恐喝)の残忍さが想定外の怖さ。
  • 新地で売春をしていた実母に紹介されて売春稼業スタート(すぐに斡旋側に回った)というエピソード、濃厚すぎるファミリー構築への渇望、最後は錯乱の上自死する弱さなど、意外に人間臭く、松永太の方がサイコパス度合いは高そう。
  • 一般的に人にどれぐらいマインドコントロール耐性があるのか分かりませんが、人生「板子一枚下は地獄」、恐怖するのみ。