東浩紀「ゆるく考える」

ゆるく考える

 

  • 図書館活用。文庫化されたようですが単行本の方。「ぼくの『平成20年代』を集めたエッセイ集」であり、「長い試行錯誤の末、ようやく批評家として『やるべきこと』を発見した、その過程の文章を集めたもの」。
  • 中心となる第二章は「震災後、ぼくはそのすべてが虚しいと感じるようになり、生き方を変え」る前の、「ゲンロン戦記」で言うところの「人々の無意識の意見を情報技術で集約し可視化することで、合意形成の基礎にすえるべきではないかという新しい民主主義のありかたを提唱」していたころの文章ですが、批評の無力さへの絶望が誠実に吐露されていて、もがいている感じが生々しい。
  • ソクラテスポピュリズムによる死(「おまえはなんかあやしい、嫌なことをいう、みんなの空気に水を差す、だから死ね」)は興味深く、プラトンソクラテスの弁明」は読んでみたい(「もっとも心を打つのは、彼が論理では勝てないことをよく承知し、それについてもはっきり語っていることである。彼は、人々が論理を選ばないことをよく知っていた。しかしそれでも論理を選び、死刑を受け入れるのだ」)。
  • 「まじめであるとは、たいていの場合、その行為の対象がまじめに取り組むべき課題であると信じていることも含む」という指摘には思わず膝打ち。