「我等の生涯の最良の年」

我等の生涯の最良の年(字幕版)

  • NHK-BSプレミアムで8月12日放送。ウィリアム・ワイラー監督。1946年。
  • 復員軍人が社会復帰に苦労する話。「タクシー・ドライバー」の先駆けですが、3人の同郷の軍人を配置したのがナイスアイデア
  • 舞台は架空の都市ブーンシティですが、モデルはシンシナティとのこと(ベンガルズ33年ぶりのスーパーボウルというナイス・タイミング)。
  • ローマの休日」も「ベン・ハー」も同じ監督。ビッグネームの作品に比べると監督名の知名度が低い気もしますが、「もうワイラーいうと、誰でも『孔雀夫人』で脱帽するもんね」(淀川長治)らしいので、忘れられた巨匠という感じなのかも。
  • 酒に溺れるアル、内に籠もるホーマーに比べると、フレッド(ダナ・アンドリュース)の葛藤が今ひとつ伝わってこない。「いい役者なのに使い道がなくなってきて、人気がなくなってきたのよ」「主役を演っても渋くて地味なのね」(淀川長治)という評価のとおりなのか、脚本の欠点なのか。軍での階級は高かったが出自は貧しい、軍務で強いトラウマという辺りがうまく伝わらない。
  • ホーマー=ハロルド・ラッセルは、1944年に訓練映画の撮影中にヒューズの欠陥で起きた爆発事故で両手を欠損。「ことに、ハロルド・ラッセルがいいんです。ラッセルは、これでアカデミー賞助演男優賞と特別賞を獲ったんですけど、素人なんですね」(淀川長治)。
  • ウィルマ(キャシー・オドネル)も魅力があった。私生活では監督の兄ロバート・ワイラーと1948年に結婚した模様。
  • ホーマーとブッチのピアノ、それを聴くアル、奥の電話ボックスのフレッドを収めたパンフォーカスは確かに印象的。新郎新婦に客が寄り集まってフレッドとペギーだけが見つめ合って佇むラストの構図も良かった。
  • 思想信条によらず軍人さんに敬意と感謝をというのはNFLを観戦していてもよく観られる光景(ヴェテランズ・デイ)ですが、フレッドが客に暴力をふるってクビになる件でよく理解できる。
  • ブッチ=ホーギー・カーマイケル。動いている姿を初めて観た。「カーマイケルは1920年代に、インディアナ大学で法学を専攻するかたわらカレッジ・ジャズ・バンドを率いていたのだが、たまたまインディアナ大学に演奏旅行に来たビックス・バーダーベックと出会ってすっかり意気投合し、勉強なんか放り捨ててそのままプロ・ミュージシャンになった」「たぶん曲の印税がコンスタントに入ってきたからだと思うけど、まだ若いうちから第一線を退き、そんなにガツガツと仕事をとらず、ハリウッドに住み着いてたまに映画に出たり(中略)『スターダスト』のカーマイケルとして悠々と心地よく、セレブリティ的な人生を送ったみたいだ」(村上春樹)とのこと。