魯迅「故郷/阿Q正伝」

故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫)

  • いつぞや広瀬隆雄が言及していた魯迅。国が衰退する中、惨めな自分から目を背けるなという趣旨だったと記憶。
  • 「小さな出来事」、「故郷」、「藤野先生」なども印象に残るものの、やはり「阿Q正伝」が面白い。
  • 「精神的勝利法」というキーワードから想像していた思念をこねくり回す中島敦山月記」的な存在とは異なり、描かれているのは知識階級が描く下層民の姿。
  • とはいえ「魯迅の『阿Q正伝』は、作者が自分とまったくちがう阿Qという人間の姿をぴったりと描ききることによって、そこに魯迅自身の苦しみや哀しみが浮かび上がってくるという構図になっています。その二重性が作品に深い奥行きを与えています」(村上春樹)という構造。