梯久美子「狂うひと:『死の棘』の妻・島尾ミホ」

狂うひと :「死の棘」の妻・島尾ミホ (新潮文庫)

  • デビュー作「散るぞ悲しき-硫黄島総指揮官・栗林忠道」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した梯久美子。本作でも読売文学賞他を受賞しており地力のあるところを証明。
  • プライヴェートの切り売り、実人生のコンテンツ化が芸術だとされていた私小説の時代の不健康感。怖いぐらい大量に残された日記の類も、実人生=芸術だから歴史的価値があるという感覚なのか。
  • 100%の八百長も100%のガチンコもなくヤオとガチのスペクトラムがあるだけ、というようなことをかつて菊地成孔が書いていたことが思い出される。リアルライフに潜む演舞性。
  • 島尾敏雄島尾ミホが各々の人生をかけて紡ぎ上げたナラティヴを異常なまでに執拗に解体する残酷な作業で、著者本人も「自分がここまで非情な書き手になれるとは思っていませんでした」とコメント。
  • 各章の冒頭に掲載された写真がインパクトとリアリティがあってガツンとくる。
    孫は漫画家しまおまほ(ミホの遺体の発見者)。