2007-09-17 高橋昌一郎 「ゲーデルの哲学−不完全性定理と神の存在論」 本 新聞の日曜版か何かで、晩年のゲーデルは隠遁して哲学に没入していたということを知り、何とも面白そうなテーマなので、検討の結果本書を購入。 「これで不完全性定理が分かる!」と帯に書かれてあるとおり、パズルとアナロジーで不完全性定理を解説する章は辛うじてイメージできますが、数学的実在論や肝心の神の存在論の辺りはちょっと理解が覚束ないです。 断然面白いのは2章、4章といった評伝的パート。「はじめに」だけでもググッと引き込まれます。 フォン・ノイマンがゲーデルの良き理解者としてのみ登場するので、ちょっと違和感がありました。あのフォン・ノイマンが素直に敬服してしまう、というところをもうちょっと掘り下げて欲しかった。 アインシュタインの辞世の言葉「私は、エレガントに逝く」が格好良かった。 全体的としては安価かつコンパクトでバランスのとれた良書だと思いますが、もう一回り詳しくしたようなものがあればそれが読みたいという感じです(ウィリアム・パウンドストーン「囚人のジレンマ−フォン・ノイマンとゲームの理論」のクルト・ゲーデル版のようなイメージ)。 ゲーデルの神の存在論は1999年の時点でまだまだ開拓途上の領域だったようで、そんなフロンティアがあったのかと思うとゾクッとします。