ジェローム・K・ジェローム 「ボートの三人男」

ボートの三人男 (中公文庫)

  • いつどんなきっかけで購入したのか今となっては全く思い出せません。奥付は2004年8月20日付の第21刷なので、割と最近のことなのですが。
  • ロンドン観光に携行したので、この「ボートの三人男」は、ロンドン橋やミレニアム・ブリッジを渡ったり、ドックランズ−グリニッジの地下道をくぐるなどしましたが、そう言えば船には乗りませんでした。
  • 「しかしこの滑稽小説を支えているものは、彼が最初から単なる滑稽小説を狙いはしなかったという点に象徴的にあらわれているような、一種複雑な味わいかもしれないのである。ここには地理への執着があり、歴史への興味がある。感傷的な自然愛があり、世俗の知恵があり、道学めいた反省がある。野放図な冒険があり、一見したところ逆説的でありながら実は極めて常識的な文明論がある。更には、ドタバタ喜劇ふうの笑いと大げさな美文とが同居しているのだ。そうした雑然とした印象、奇怪な複雑さは、言うまでもないことだが、あれほど野性的でありながらあれほど洗練されており、あれほど涙もろいくせにあれほど諧謔を愛する、イギリス人の多層的・多面的な性格の反映なのだろう」という井上ひさしの解説に深く納得しました。
  • それを特に実感したのは個人的には第10章(第一夜〜天幕の下で〜助けてくれという叫び〜湯沸かしの抵抗をいかにして克服するか〜夕食〜高潔な心境〜求ム、南太平洋ニ近キ、快適ニシテ排水ノ設備ヨキ孤島〜ジョージの父の奇妙な体験〜眠れぬ夜)。非常に印象深かった。
  • 国史に関する知識の欠如はいかんともしがたいですが、往路の機内で「ブーリン家の姉妹」を観ていたので、アン・ブーリンとヘンリー8世のくだりだけは理解できました。
  • 予想より多面的で面白く、期待していなかった分嬉しいサプライズでした。