魚住昭 「渡邉恒雄−メディアと権力」

渡邉恒雄 メディアと権力 (講談社文庫)

  • 意外なことに、共産党に入党前後までの鼻っ柱の強い青年期には好感を抱かずにはいられません。
  • 正力松太郎との長年の確執を経て自らが怪物化する務台光雄も凄いですが(「務台の演説は昼食抜きで延々九時間つづいた」)、それに対して「務台さんがまさか九十四歳まで生きるとは誰も思わなかった。だから、務台さんが死んだら、今にも自分の天下になるとみんな思っちゃうんだなあ・・・・・それを祈ったら、もうだめなんです。信任はなくなるんだ。顔に出てしまうからね。僕は『じいさん、長生きしてくれ』と祈っていた」と言える渡邉恒雄も恐ろしい。
  • ここまで人脈を広げるからには流石にもうちょっと人間的な魅力があるのだと思いますが、結局のところ佐野眞一の解説にあるとおり、「渡邉氏には人を辟易させ、軽蔑心を内心起こさせる卑小な悪党のにおいはあっても、あえて人びとの憎悪の標的にわが身をさらしながら、最後はその人びとさえ魅了してしまうよう巨悪の底光りはない」という説明に集約されると思います。
  • 宮仕えの悲哀はイヤという程身に染みます。就職活動する前に読んでおくと良いかもしれません。
  • やはりこの人読ませます。メチャクチャ面白かった。次は共同通信社社会部編「沈黙のファイル−『瀬島龍三』とはなんだったのか」。