本田靖春 「我、拗ね者として生涯を閉ず(上)(下)」

我、拗ね者として生涯を閉ず(上) (講談社文庫)   我、拗ね者として生涯を閉ず(下) (講談社文庫)

  • 新聞記者・ノンフィクション作家としての輝かしい業績を既知のものとすれば、単独作品としての魅力は見出し難く、おっさんの自分語りウザいという観は否定できません(自分の来歴や思考を興味深く読ませるために必要な距離感・バランス感がやや欠如しているせいではないかと思うのですが)。
  • そのような執拗さ・思い込みの強さがノンフィクション作家として自分と無関係の事象に迫る時にはプラスに作用していたと思うのですが、死にゆく間際に語るのが「私が愛した読売社会部とは」というのは寂しい気がします。
  • とネガティブな感想しか出てきませんが、失明、両足切断といった過酷な闘病生活の中で死を覚悟した人間が「俺の話を聞け」とばかりに語るその覇気に圧されて一気に読了しました。
  • 特に、第8章「渾身の『黄色い血』キャンペーン」はさすがにグッと読ませる内容で、自らの肝臓癌を薬害エイズへの自責の念と絡めて語る熱さが本田靖春の真骨頂と思われます。
  • このままスムースに「不当逮捕」も読了といきたい。