村上春樹編・訳 「バビロンに帰る−ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック2」

バビロンに帰る―ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック〈2〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

  • 去年の8月末に「ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック」の新書版を読み終わって以来、本作の新書版はいつ出るのかと思っていたところ11月に早々に発売、いそいそと購入したものの、なんのかんのでもう9月。
  • 数日に1冊ぐらいのペースで読めると理想的なんですが、日常の雑事に追われていると中々そういう訳にも行きません。読みたいものだけがどんどん積み上がっていくことに若干のストレスを感じる時もあるのですが、もう眼を大事にしながら老後を楽しみに待つしかありません。
  • それはともかく、昔はただの短編集という感じで読んだのですが、5つの短編中、名作「バビロンに帰る」以外は基本的に「<シングル盤B面>的な作品」という、ネーム・ヴァリューに物を言わせた趣味性の強いセレクションであることを認識して好ましく感じました。スコット・フィッツジェラルドの作品集ではなく、スコット・フィッツジェラルドという人物を深くを知るために選ばれた5つの短編、という感じでしょうか。
  • 「そこにあるものの中で、今もっとも重い意味を持つのはおそらく、若き日の華やかな成功でもなく、晩年の没落と傷心でもなく、あるいはまた他人の小説の手軽な題材にもなったその両者のコントラストでもないだろう。何にも増して重要なのは、敗北に屈すまいとした彼の闘いぶりであり、その闘いから彼が勝ち得た『静かなる勝利』とでもいうべきものであるだろう」という一文を読んでしまうと、「夜はやさし」と「ラスト・タイクーン」も早く読まねば、とまた焦ってしまいまそうですが、自然体で。