- 「桂米朝上方落語大全集第四期」。やや間が空きましたが、第三十二集は「崇徳院(1972年10月9日。大阪朝日生命ホール)」、「看板の一(1975年6月28日。姫路市文化センター)」、「狸の化寺(1974年4月21日。京都府立文化芸術会館)」の3つ。引用は例によって京須偕充。
- 「崇徳院」は、東京では三代目桂三木助(大阪でも修業をした)が得意にしていたそうですが、「和歌が題材になるくらいだから上方落語」で、「本場の味は三代目桂米朝、二代目桂枝雀で楽しんで欲しい」とのことで、初めて聞くには誠に適した音源のようです。
- 「恋患いという設定は古風だが、小倉百人一首でも名高い歌が題材になっていて雅味もあり、いかにも落語らしくほのぼのと楽しい上方噺だ」との解説どおり、ほのぼのとした品の良い噺。
- 緋塩瀬=深紅色の羽二重(の一種)。茶帛紗=茶の湯で、道具を拭ったり盆・茶托の代用として器物の下に敷いたりする絹布。
- 「私はこの落語のサゲがとってつけたようで、あまり良いサゲとは思えませんので、やらずに切ってしまうことが多いのです」と本人が解説しているとおり、「割れても末に買わんとぞ思う」は言わず、「『崇徳院』というおめでたいおはなしでございます」で切っています。
- 「看板の一」は古谷三敏「寄席芸人伝」でも少し出てきましたが(「小博打三好」)、「いわゆる鸚鵡返しの落語パターンだが、あまり拵え事めいていなくておもしろい噺」。マクラは下ネタですが、オーソドックスで落語らしい落語。
- 知らなかったので意外に感じましたが、元来は東京のネタとのこと。
- 「あまり拵え事めいていなく」とはいえ、「こら看板や」という強弁が無理矢理で可笑しい。
- 「狸の化寺」の「キンが擦れる」というサゲが今ひとつ分からなかったのですが、これは天女の衣(=狸の陰嚢(八畳敷))が擦れる、かつ、「金」と「衣」がかかっているということなんでしょうか。
- 次集、第三十三集は「高津の富」、「田楽喰い」、「除夜の雪」。