桂春團治 「三代目桂春團治(1)」

桂春団治(3代目)(1)

  • 「鋳掛屋(1983年9月8日。大阪厚生年金会館)」は桂春團治お家芸。「とらとやな」といえば春團治一門新聞の紙名にもなる程の名刺代わりの噺。前半が独立すると「桃太郎」という噺で、元々は「山上詣り」という噺の前半部分。
  • 何度聞いても悪童の悪態(「とらとやな〜、おった〜ん」、「ははあ、そんで大きゅうなって直しに回ってんのやな」)には頬が緩みます。
  • 「祝いのし(1988年1月20日。大阪厚生年金会館)」は「火焔太鼓」と同じく、間の抜けた亭主にしっかり者の女房のパターン。「女房に教わった祝いの口上、友人から教わった熨斗の能書、いずれも甚兵衛がやるとうまくいかずに笑いを生む。いわゆる鸚鵡返し噺の典型で、落語の基本的構造の見本のような噺(京須偕充)」とのことですが、甚兵衛さんの言い淀みのわざとらしさ・しつこさは若干気にかかりました。
  • 「あれは・・・・・、鮑のおじいさん」という江戸版のようなハッキリしたサゲはなく、「おなじみの『祝いのし』でございます」で切っています。ライナーによると「鮑やさかいぼやきます。他の貝なら口を開きます」というのが「祝いのし」の本来のサゲだそうです。
  • 「ははぁ喜ぃさん、こらお前、誰ぞにおいどいらわれてるな?」「そんなこそばいとこ誰にいらわすか」というやりとりが妙にコケティッシュで可笑しい。
  • マクラを振らず、恐ろしく低いテンションで始まるところが三代目桂春團治のトレードマークらしいのですが、どえらく渋い幕開けとコミカルな「クゥクゥ(鳩親父)」の声色とのコントラストで笑ってしまいます。
  • 「豆屋(1964年4月27日、日立サルーン)」は過去数回演じただけで、現在はやらない演目らしいですが、「馬のす」同様の「逃げ噺」とのことで、「まーめー、まーめー」という売り声が耳に残る軽い感じの噺。
  • 「毎度おおきに?お前みたいな豆屋呼んだん今日が初めてやぞ」「ええ、こんにち初めておおきに」「おお、えらいオモロイやっちゃなぁ。おおきにという言葉は商い済んでから言う言葉と違うのんかい?」「へぇ、お先におおきに」というやりとりがジワジワと可笑しい。
  • 「豆屋」は二代目桂春團治の得意にしたネタで録音も多数残されているらしく、「実は『豆屋』を三代目は、このテープから聞き覚えたもので、マクラから少しきついめの客の言い回しまで、二代目にそっくり」とのこと。
  • もう少し他の音源を聞くかどうかは検討中。