Winsor McCay 「Little Nemo in Slumberland 1906-1907, 1908-1909」

  • アメコミついでにコミック・ストリップ。以前から関心があったウィンザー・マッケイ「夢の国のリトル・ニモ」。
  • エヴァーグリーンから出版されたハードカヴァー版(「リトル・ニモ:1905−1914」)がスタンダードのようですが、入手困難だったので、クリエイト・スペースから出ているペーパーバックをチョイス。
  • 理由はよく分かりませんが、「1906−1907」の方はアンソロジー、「1908−1909」の方はコンプリート収録のようです。1905年分が収録されていない理由や、1910年以降の作品も刊行する予定があるのか否かもよく分かりません。
  • 圧倒的な画力とイマジネーションが紙面の隅々まで汪溢していて、時代を超越した尋常ならざる完璧な世界に感動します。20世紀のコミックの要素は全て始原において用意されていたという感じで、紛れもない天才の所業であることがどの任意の一コマからでも否応なく伝わってきます。圧巻。
  • 毎回最終コマでニモが夢から醒めるという永遠のワンパターンではあるのですが、とにかくラヴリーで眺めているだけで気持ちが和らぎます。
  • しかしながら、100年以上も前の新聞から復元されているため若干褪色してしまっているのは味と言えなくもないのですが、判型の小ささと印刷の不明瞭さが相まって、とにかく文字が読みとれないのが残念至極。後年にいくに従って少しずつ読みやすくなってはくるのですが、ほとんどが読み取り不可能〜苦行といったレヴェル。確たるストーリーなどありませんので、あまり気にする必要はないのかもしれませんが、惜しいものは惜しい。
  • 当然のことながら著作権は失効してパブリックドメインになっているので、このサイト(the comic strip library)で全作品が閲覧可能なのですが、フルサイズの画像だと何が書いてあるのか細かいところまでキッチリと確認できるのも悔しさを倍増させます。プリントメディアがディスプレイに負けているようでは。
  • 文字が判読できないせいだけでもなさそうですが、フリップの叔父の「ドーン・ガード(Dawn Guard)」というキャラクターが今ひとつ理解できませんでした。モデルでもあるのでしょうか。
  • 前世紀初頭にして、引っぺがしたコマの枠線(「Oh! Don't!! The artist will be angry!」)でコマ上部のタイトル文字を叩き落として食べたり、コマから絵がドンドン消えていき最後は枠線も崩れるなどというモダンな仕掛けが。

http://www.comicstriplibrary.org/images/comics/Little%20Nemo/hs_Little%20Nemo%20-%201907-12-01.jpg
http://www.comicstriplibrary.org/images/comics/Little%20Nemo/hs_Little%20Nemo%20-%201908-11-08.jpg

  • サンデー・プレス・ブックスから出版された「リトル・ニモ・イン・スランバーランド:ソー・メニー・スプレンディド・サンデーズ!」や、その第2集「リトル・ニモ・イン・スランバーランド:メニー・モア・スプレンディド・サンデーズ!」が、オリジナルどうりの21×16インチ(533×406センチ)の大判、デジタル技術を駆使した修復・リプリントだそうで、高価ではありますが入手する価値は高そう。
  • 第2集はアマゾンでも購入できるようですがでも第1集は既に入手困難な模様。サンデー・プレス・ブックスのウェブサイトで僅かに入手可能なようですが、250ドルはさすがに割高で躊躇します。今後綺麗なリプリントが発売されれば入手したいですが当面は別のものを読みたい。エルジェ「タンタンの冒険旅行」やハル・フォスター「プリンス・ヴァリアント」、チャールズ・M・シュルツ「ザ・コンプリート・ピーナッツ」等を検討中。
  • ウィンザー・マッケイ手書きによるアニメーションや、宮崎駿も参加した映画「リトル・ニモ」(1989年)も現在YouTube等で見ることができ、歴史的価値や意欲を感じることができます。

  • 追記。続編(1910-1911, 1912-1913)発見。買いませんけど。