桂米朝 「桂米朝上方落語大全集第四期(36)」

桂米朝 上方落語大全集 第四期

  • 「しまつの極意」は、「あらゆるケチばなしの集大成」というだけあって、ケチにまつわる有名無名の小咄が次々に積み上げられていき、最後の住吉大社へのお詣りのくだりは大変盛り上がるのですが、その後サゲに向かう展開がやや取って付けたような感じがする上にサゲもピンと来ないなというのが正直なところ。
  • しかしながら、桂米朝の解説によると、「『こんな事はみな枝葉末節のざれごとである。本当のしまつはこれじゃという極意がある・・・・・』ここからサゲへつながるのですが、この何でもないような一言、私はこれがはなし家の、この落語に対する姿勢を示しているように思え」、かつ、「そしてこのサゲは、このケチばなしの集大成に対して、画竜点睛ともいうべきしめくくりを果たしています。私はこのサゲに禅味のようなものさえ感じる」のだそうで、素人の浅薄な感覚では充分に理解が及びません。
  • 以下分かった範囲でメモ。
    • 茶の子=粗品。法要の際、香奠返しの表書の献辞に用いられる。
    • 亀節=小形の鰹を3枚におろし片身を1本の鰹節にしたもの。本節のように背と腹に分けないので亀の甲の形に似る。
  • 「坊主茶屋」は、もの凄く年配の女郎と梅毒で鼻が落ちた女郎に当たった腹いせに、寝ている女郎の頭髪を剃り上げて逃げるという恐ろしく気色の悪い噺。落ちていた付け鼻を団子と間違えて食べてしまう(「鼻代(花代)が払たある」)というのも実に気味が悪いですが、剃ろうとしたら眉毛がない、鬢の毛もない、フケだらけという描写がまた気持ち悪く、死亡率が低いためか梅毒の症状はドライな笑いの対象だったようですが、凄惨すぎて全然笑えません。
  • サゲは「さあ、あんたが冷や酒飲ましたよってに、むこうで湯かんしやはったんやがな」となっていますが、古い型であまり良いサゲではないとのこと。「医者がさじ投げたらあとは坊主に決まったある」とサゲるのが主流なのでしょうか。
  • 以下分かった範囲でメモ。
    • 五燭の電球=ピンポン球より少し大きい電球。
    • 連鎖劇=舞台劇と映画を組み合わせて見せる演劇。明治末年から大正中期にかけて流行した。キノドラマ。
    • 割り木=細く割った木。たきぎ。
    • スケマ=ゲタ。
    • 紀州さんのお通り=こう言えばいびきが止むというまじない。
  • 「桃太郎」は、桂春団治「鋳掛屋」の前段でさんざん聞いたせいか、聞いているうちに自然と「とらとやな〜」が聴きたくなってしまいます。こちらはこちらで「フーン」を連発して大げさに感心してみせるくだりが可笑しい。
  • とうとうと説明される「桃太郎」の含意に他愛もなく感心していたのですが、桂米朝の解説によると「どうせ古い落語家の作ったものでしょうが、実によくできていますな。『なるほど、あの話はこういう意味で作られたのか』と、まともに信じ込んでしまうくらいです」とのこと。
  • 次集、第三十七集は「質屋蔵」、「鉄砲勇助」。