ルイ・カストロ 「ボサノヴァの歴史」

ボサノヴァの歴史

  • コンピレーション・アルバム「ザ・ボサノヴァ」に触発されて購入。2段組、約500ページのミッチリとした大著ですが、写真も豊富で、意外にスムースに読了。
  • 真偽の程は分かりませんが、様々な人物が織り成すボサノヴァの歴史を丹念に記録したアネクドータル・サーガ。
  • シナトラ・ファルネイ・ファンクラブはナイトクラブではなく単なるファンクラブ(愛好家団体)である(パスケースの写真という物証あり)とか、「これが、リオがよこしたクソだ!」と言って「想い溢れて」のレコードを叩き割ったのはオズヴァルド・グルゾーニではなくアルヴァロ・ハモスである(本人の証言有り)とか、宮下英樹センゴク」ばりに通説が覆されること多数(「だがこの通説には疑問が残る」)。
  • ジョアン・ジルベルトが一時都落ちして音楽性を磨き上げる第7章「失われた自我を求めて」に痺れました。リオに戻って来たときにはバチーダを完成させていたという、いわばブラジル(ボサノヴァ)版クロスロード伝説。
  • 最後は「シナトラ&ジョビン」の録音光景。シナトラ・ファルネイ・ファンクラブで始まったボサノヴァの歴史がフランク・シナトラで締めくくられるという趣向。
  • 小西康陽マーシャル・マクルーハン広告代理店。ディスクガイド200枚。小西康陽」でも紹介されていたレニー・デイルのショー(「麻酔医が麻酔を施すように、簡単に聴衆を捻じ伏せ、リラックスさせる術を心得たエンターテイナー」)についても詳しく描かれています(「ベッコに登場したレニーは、まさに彼が初めて持ち込んだこの新しい習慣(つまり、リハーサル)ゆえ、センセーションを巻き起こした」)。
  • 「曲名・アルバム名索引」、「人名・バンド名索引」に加え、「読者のためのCDガイド」、コパカバーナやイパネマの当時の地図、ディスコグラフィーなどを巻末に収録する充実ぶり。愛のある良い仕事です。