「わが谷は緑なりき」

• ＮＨＫ−ＢＳで１０月１９日放送。ジョン・フォード監督。その昔、誰かのエッセイで読んで以来タイトルを記憶していた作品。引用元の文章の方は遥か忘却の彼方ですが、映画の方はこの度目出度く鑑賞。１９４１年。

• ハリウッド黄金期のクラシックの威力は桁外れで、ど真ん中・ストレート・１６０ｋｍという感じの剛直さに、斜に構える余裕も与えないまま涙腺が緩みます。

• 泣けたなぁと思いつつ色々と調べてみると、父親役のドナルド・クリスプはリリアン・ギッシュとＤ．Ｗ．グリフィスの「散り行く花」に出演するなどサイレント時代から活躍していた俳優である一方、主人公ヒュー役のロディ・マクドウォールは不遇の時代を経て「猿の惑星」の猿で復活し、「バグズ・ライフ」のミスター・ソイルが遺作（声優）なんだそうで、時代の流れや人生の不思議さに、映画本編とは別の部分でも感慨に耽ってしまいます。

• その他、淀川長治／山田宏一／蓮實重彦「映画千夜一夜」で蓮實重彦が「もう一つ、忘れられない風は、『わが谷は緑なりき』の結婚式のシーンで、モーリン・オハラのベールが風で上に舞い上がるんですね。ウォルター・ピジョンを愛していながら別の男と結婚する彼女の気持ちが、あのベールで痛いまでに伝わってくる」と語っていましたが、確かにあのシーンは印象的でした。