- 「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」という名歌の存在は知っていたのですが、書店で手に取った伊藤一彦/堺雅人「ぼく、牧水!歌人に学ぶ『まろび』の美学」で知った「けふもまたこころの鉦をうち鳴しうち鳴しつつあくがれて行く」という句に惹かれ、歌集を購入してみました。
- 件の伊藤一彦の解説によると、34歳から没年までの壮年後期が「牧水歌風の完成期」ということのようですが、やはり初期の瑞々しさが好みでした。以下、一読後に印象に残ったものから5首。
- みな人にそむきてひとりわれゆかむわが悲しみはひとにゆるさじ
- もの見れば焼かむとぞおもふもの見れば消なむとぞ思ふ弱き性かな
- さらば君いざや別れむわかれてはまたあひは見じいざさらばさらば
- われ二十六歳歌をつくりて飯に代ふ世にもわびしきなりはひをする
- さうだ、あんまり自分のことばかり考へてゐた、四辺は洞のやうに暗い