「若者のすべて」

若者のすべて【HDニューマスター版】 [DVD]

  • 若者のすべて」という邦題は、微妙に意味不明でこなれていない感じですが、絶妙な雰囲気があります(原題は「ロッコとその兄弟たち」)。
  • モノクロ時代のネオ・リアリズモとカラー時代の退廃の美との比較については、「『若者のすべて』や『白夜』のころのヴィスコンティの白黒の映画というのは、『イノセント』に象徴されるヴィスコンティの豪華絢爛とはずいぶん違う感じがするんですけど・・・・・」という山田宏一に対して、「そんなことはないね」と淀川長治が一刀両断。
  • 曰く「ぼくは、『若者のすべて』観るでしょう、バルコニーで口説かれたり、口説いたりしていると、ネオリアリズムのにおいがたしかにある。それから森のなかで女を殺すとこね。そのときに女がうしろ向いたときに、うしろの木が十字架に見えたりね。池のそばで殺されたりな。あんなとこに非常にクラシックなロマンがある。イタリアのサイレント時代から昔からある、殺す、殺されるで、とうとう女を殺すとこね、女を斬っちゃうとことね。イタリア映画だな。アメリカやフランスではああいうようにいかんなあ。すごかったなあ。それで捨てていくからね。女殺して逃げていくからね、男は。ああ、いいなあと思って観た、ぼく」とのこと。
  • 三男ロッコのキャラクターがリアルじゃないなと思ったのですが、これについても、「『若者のすべて』は、歌舞伎みたいだな」という淀川長治の感想を読んで違和感は解消。
  • 「『若者のすべて』のカティーナ・パクシノウなんか圧倒的だと思いましたね」(蓮實重彦)、「よかった、よかった(笑)。大好きだった、あの女優。お母さんというような感じがあるのはやっぱりイタリアですよ。家族を描いて、ヴィスコンティはいいもんなあ」(淀川長治)と激賞されている母親役カティーナ・パクシヌーですが、ナチュラル過ぎて気にも止まりませんでした。