松尾弌之「大統領の英語」

大統領の英語 (講談社学術文庫)

  • JMMで配信されていた春具「オランダ・ハーグより」の第156回「The Accidental President」における「歴代の大統領の文章を分析して、文章から彼らの資質を研究した(中略)たいへんおもしろい書物」との紹介に興味をもって購入。
  • その春具のエッセイでは、「松尾教授はフォード氏は実直、素朴な言葉でストレートな物言いをする政治家だったと論じています。フォード氏はケネディのような名文家でもなく、レーガンのようなストーリーテラーでもなかったが、ニクソン氏のように言い訳がましい言葉で話すこともなかった」と書かれていますが、ジェラルド・フォードの章は残念ながらありません。
  • 大統領のスピーチならなんとかなるかな、と手にとってみましたが、自分の語学力を過信していたというか、大統領のスピーチを見くびっていたというか、意外に歯応えあり(考えてみれば当たり前)。
  • ジョン・F・ケネディ以降の(ジェラルド・フォードを除く)8人の大統領について、それぞれ解説(業績や演説の特徴など)と実際の演説(英文+和訳)で構成。前者は面白く読めるのですが、実際の演説を一語一語読むのは(語学力の欠乏故か)少し退屈でした。
  • ブッシュ・ジュニア(「何も主張しなければ何も主張していない(If you don't stand for anything, you don't stand for anything)」等のトートロジー集には笑いました)までで終わりですが、もしバラク・オバマが載るとしたら、アリゾナ銃乱射事件の追悼式典のスピーチなんかが選ばれるんでしょうか(「All of us- we should do everything we can to make sure this country lives up to our children's expectations」)。
  • ジミー・カーターの章が興味深かったのですが、「大統領。あなたはこの国を引っぱっていないではないですか。あなたは政府を運営しているだけです(Mr. President, you are not leading this nation -you're just managing the government)」という指摘は、野田佳彦にも通ずるものがあるような気がしました。徒に「lead the nation」しようとして「just manage the government」ができなかった鳩山由紀夫菅直人よりは良いのかもしれません。
  • これまで、カレッジ・フットボールの記事を読んでいて、テキサスA&M、ミシガン・ステイト、オハイオ・ステイト等々の州立大学の概念にいつも混乱(カリフォルニア州立大学とカリフォルニア大学は別の大学だけれどもどちらも州立大学等)していたのですが、「land grant college」の説明(「連邦政府が所有地を州政府に与えて、その土地を元手にした資金で大学をつくらせたという19世紀の制度。今日の州立大学は大部分こうして生まれた。そして州立大学は地方における農業知識の普及や化学、工学の知識の普及に貢献した。したがって今日でも多くの州立大学は学問の探究を極めるというよりも、知識を広めるという『教育機関』としての立場を保持している」)を読んで初めてスッキリしました。