将口泰浩「キスカ島奇跡の撤退−木村昌福中将の生涯」

キスカ島 奇跡の撤退―木村昌福中将の生涯 (新潮文庫)

  • 半藤一利保阪正康「昭和の名将と愚将」では触れられていなかった木村昌福中将のノンフィクション。盆の最中に書店で平積みされていたところ、これぐらいのヴォリュームならばと、軽い気持ちで購入。
  • 商業的企図はともかく、情報収集・分析力と文章力が(元新聞記者にも関わらず)絶望的に不足しており、ウィキペディアの記事の方が感動できると思います。どうせ読むのであれば、生出寿「戦場の将器:木村昌福連合艦隊・名指揮官の生涯」の方が良かったのかもしれません。
  • 鬢を打つから「ビンタ」(鹿児島弁のビンタ(頭部)に由来という説もあるよう)、築地にあった海軍兵学校天皇行幸した通りだから「みゆき通り」など、語源・由来にまつわる本筋に関係のないトリビアが変に記憶に残りました(そういうのもいちいち流れを悪くしているんですが)。
  • 大黒屋光太夫が漂着したアムチトカ島が、キスカ島の直ぐ近くだとは、本書の地図を見て初めて知りました。
  • キスカ島撤退作戦の成功要因を列挙した上で「以上はすべて天佑にあらずしてなんぞや」とする日記の一文が感慨に溢れていて染みます。