村上春樹 「アフター・ダーク」

アフターダーク (講談社文庫)

  • 東京奇譚集」(2005年)に続いて「アフター・ダーク」(2004年)。順番が逆になりましたが単なる勘違い。
  • 一人称複数パートのスタイル上のチャレンジについては、「現代というデジタル社会をデジタル処理する作業をやりたかった」、「上の方にあるカメラアイが世界をずっとなめまわしていて、その意志が抽象的に世界を司っている。これは言うなればインターネット世界のあり方です。ものごとの善悪よりは、情報の精度が優先順位の尺度になっている」(「考える人」2010年8月号)とのことですが、あまり成功しているようには思われません。
  • どちらかというと古典的メディアである映画を思い起こさせます。読みながら、ジム・ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」や「ミスレリー・トレイン」を思い出しましたが、著者本人はジョアンナ・シムカス主演の「若草の萌えるころ」を意識していたとのこと。
  • なお、「アルファヴィル」については、2005年のインタヴューでは「『アルファヴィル』という映画も僕はとても好きですね。高校時代に見ました」と語っていますが、2010年のインタヴューでは「ゴダールの『アルファヴィル』なんか本当に好きだったんだけど、でもちょっと前に改めて見たら、やっぱり『それ風』に作りすぎているところが目について、正直疲れました」とのこと。
  • 批評・読者の反応の双方で評判が悪かったようですが、登場人物は久々に魅力的ではないかと思います。