あだち充 「H2(1)〜(20)」

H2 文庫版 コミック 全20巻完結セット (小学館文庫)

  • 特段のきっかけもなくあだち充。全く未読かつ世評の高そうな「H2」にしてみました。1992年〜1999年連載。
  • 垢抜けなくて、行き当たりばったりで、ワンパターンながら、ツボにはまるとやはり一定の破壊力があり、確立したフォーミュラのある人の強味を実感させられます。
  • サッカー部との対戦、明和一高との練習試合、野球部創設、佐川入学等々、1年生時のパートには「七人の侍」前編と同種の勢いと楽しさがあります。
  • 個人的には2年生時が一番上手く回っているように思います。とりわけ、夏の北東京大会栄京戦がピーク。
  • その後、ひかりの母親の死、英雄の視力の一時的な低下等、中波小波を連発してストーリーを動かしていく割には、今ひとつ大きなうねりにならない印象。
  • そして微妙すぎる結末。多義的な解釈が可能な素晴らしいラストというよりは、どう解釈しても腑に落ちない部分が出てくるという、モヤモヤした幕引のように感じられます。
  • ひかりと比呂のハッピーエンドがあだち充の当初の構想だったというのが本当であれば、サヨナラ安打は比呂の方が多い、というのが一つの伏線になるはずだったんでしょうか。
  • 初読はグイグイと読み進められたのですが、復習の2周目に入ったとたんに減速甚だしく、この耐久性の低さが週刊漫画誌連載の宿痾。
  • 次に読むとしたら、既読で文庫化済の「ラフ」か、未読で文庫未収録の「クロスゲーム」か。そのうちにまた気が向いたら。