古庄弘枝「沢田マンション物語− 2人で作った夢の城」

沢田マンション物語 2人で作った夢の城 (講談社+α文庫)

  • 都築響一「珍日本紀行−西日本編」で紹介されていた、高知市の沢田マンション。wikiで調べていて一番驚いたのが、建築した沢田嘉農の「32歳にして、当時13歳の妻裕江と実質的な結婚生活に入る」というプロフィール。下衆な好奇心を満たすべく、都合良く文庫化されていた本書を購入。
  • マテリアルの面白さ、異常さにも関わらず、単調な賞賛的記述が続くばかりで、読物としての完成度は低いと言わざるを得ません。ある種の与太話にもまったく無批判で、ノンフィクション作品を構築する上での最低限の判断力が足りないという印象。
  • 沢田マンションそのものにはあまりフォーカスされていないのも不満点。この程度の内容であれば、方言も含めて聞き書きでまとめた方がよかったと思います。
  • 妻裕江との結婚話については、困窮した両親の口減らしという側面があったようですが、それ以前から気に入っていたというエピソード(酔った嘉農が裕江の名前を連呼した)もあり、奥歯にものが挟まったようなすっきりしない印象(事実としては15歳で第一子を出産)。
  • ちょっとタイプは違いますが、新聞配達から身を起こし、新宿に持ちビルを建てた太田篤哉を思い出しました。あるいはジェームズ・ブラウン
  • 加賀谷哲朗「沢田マンション超一級資料−世界最強のセルフビルド建築探訪」(1,800円)の方が面白かったかなという気もしますが、時間配分のプライオリティー上、これ以上深追いはしないことにします。どうせ買うのであれば、山下豊による大阪市営下寺住宅の写真集「軍艦アパート」かも。