日本戦没学生記念会「きけわだつみのこえ−日本戦没学生の手記」

きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記 (岩波文庫)

  • 昨夏のサマーリーディング用に購入したのですが、だいぶタイミングがずれ込みました。
  • イデオロギー的な側面は棚上げして、虚心坦懐に個々の記録を読むと、一人一人の具体的な人生が感知でき、思わず背筋が伸びる場面はままありつつも、母集団の性格上、理知的な傾向が強く、ストレートに心を揺さぶられたりということは思ったほどありませんでした。
  • 読後に自然体で反芻するに、軍馬の世話について詳細にスケッチした渡辺辰夫(「馬の毛色は鹿毛、栗毛、青毛栃栗毛等々色々あるが、純白(月毛)は敵から好目標にされる関係で、軍隊の馬として好まれないという事を知った」)、永田和生の日記の若者らしい日記の一文(「そのビール屋のばあさんよりもおでんやのねーさんの可憐な顔が残っている。小学校を出てからずーとここにいるので世の中のことはあんまり知りませんと言っていた。小樽の街はいいではないか」)、遺本として残した蛺仁五郎「クロォチェ」の活字に丸囲みで恋人への遺書を残した上原良司(「きょうこちゃんさようなら僕はきみがすきだった」)の3人が印象に残っています。
  • 「メンデルの法則」のグレゴール・ヨハン・メンデルは、生前研究成果が認められず、「見ていてごらん。今に私の時代がくる」と言ったというエピソードは寡聞にして知りませんでした。