後藤田正晴/御厨貴 「情と理−カミソリ後藤田回顧録(上)(下)」

情と理 -カミソリ参謀回顧録- 上 (講談社+α文庫)  情と理 -カミソリ参謀回顧録- 下 (講談社+α文庫)

  • 御厨貴「知の格闘」の読後で興奮していた時に購入したもの。
  • ものすごく面白い回顧録ですが、これを読む限りでは「オーラル・ヒストリーを当初は極めてかたくなに拒み、途中でわれわれに何度も怒声をあびせ、ある時など今でも自分が現役であるということを見せるためでしょう、予算の陳情者に対して『いくらを保証してやる』という電話を、『きみたちも、聞いておってかまわん』と言って聞かせるなど、彼のすべてをできる限りあけすけに見せた」というようなギラギラした凄みはあまり見当たらず、そこが物足りないといえば物足りないかもしれません。
  • ただし、「権力というのは自分でもぎ取る以外にないんですか」という質問に対する「ないね。要するに、鉄砲での殺し合いから票による奪い合いになった。そこが進歩しただけだ」という断言はグッときます(創政会騒動)。
  • 全体を通じて「黄金期の堂々たる戦後官僚、『エリートは我々である。エリートにはその使命と責任がある』と言い切ることができる官僚たちの組織観なり統率力」に痺れます。志は高くありたいものです。